01 / CELL MEMBRANE

まず、細胞膜とは何か

細胞膜は、主としてリン脂質二重層からなる薄い境界である。 リン脂質には、水になじみやすい親水性部分と、水を避ける疎水性部分がある。 水中では親水性部分を外側へ、疎水性部分を内側へ向けて二重層をつくる。

この膜は単なる袋ではない。物質の出入り、細胞同士の認識、接着、情報受容などを担う。 その多くを実行しているのが、膜に存在する膜タンパク質である。

細胞膜と膜タンパク質の模式図 リン脂質二重層に、膜貫通タンパク質、表在性膜タンパク質、脂質アンカー型タンパク質が配置されている。 細胞外 細胞質 膜貫通タンパク質 表在性膜タンパク質 脂質アンカー型 リン脂質二重層
図1 膜タンパク質は、膜を貫通するもの、膜表面に結合するもの、脂質を介して固定されるものなどに分けられる。

02 / MEMBRANE PROTEIN

膜タンパク質とは何か

膜タンパク質は、細胞膜または細胞内小器官の膜に存在するタンパク質の総称である。 膜との結びつき方により、主に次のように分類される。

種類 膜との関係 代表的な役割
膜貫通タンパク質 脂質二重層を一回または複数回横切る 受容体、チャネル、輸送体、酵素
表在性膜タンパク質 膜表面や他の膜タンパク質に非共有結合で結合する 情報伝達、細胞骨格との連結
脂質アンカー型タンパク質 共有結合した脂質を膜へ差し込んで固定される シグナル伝達、細胞認識

膜内部は疎水性であるため、そこを横切る部分には疎水性アミノ酸が多い。 多くの膜貫通部分はαヘリックスを形成し、 一般に約20残基前後の疎水性配列が膜を横断する。

03 / SEVEN TRANSMEMBRANE HELICES

「7回膜貫通」とは何を意味するのか

一つのポリペプチド鎖が、細胞膜を7回横切る構造をもつことを意味する。 GPCRでは、その7本の膜貫通αヘリックスをTM1からTM7と呼ぶ。 N末端は細胞外側、C末端は細胞質側に位置し、三つの細胞外ループと三つの細胞内ループが各ヘリックスをつなぐ。

GPCRの7回膜貫通構造 細胞膜を七本のアルファヘリックスが貫通し、細胞外にリガンド、細胞質側にGタンパク質が描かれている。 細胞外 細胞質 TM1TM2TM3 TM4TM5TM6 TM7 リガンド 三量体Gタンパク質 N末端 C末端
図2 典型的なGPCRの模式図。7本の膜貫通αヘリックスが受容体本体をつくる。
「7回膜貫通型受容体」と「GPCR」はしばしば同義のように使われるが、厳密には、 7回膜貫通構造をもっていてもGタンパク質を介さないタンパク質が存在する。

04 / ACTIVATION

GPCRはどのように情報を伝えるのか

細胞外側からリガンドが結合すると、GPCRの立体構造が変化する。 とくに細胞質側のヘリックス配置が変わり、三量体Gタンパク質と結合しやすくなる。

受容体はGαサブユニット上のGDPをGTPへ交換させる働きを促進する。 活性化されたGαとGβγは、それぞれ酵素やイオンチャネルなどの標的を調節する。 その結果、細胞内でセカンドメッセンジャーの増減や電気的応答が起こる。

GPCR情報伝達の流れ リガンド結合、受容体活性化、GDPからGTPへの交換、標的タンパク質調節、細胞応答の順に示す。 リガンド結合 受容体の 構造変化 GDP → GTP Gタンパク質 活性化 酵素・チャネル 細胞応答 Gαは自身のGTPase活性によってGTPをGDPへ戻し、信号を終了させる。 不活性状態への復帰
図3 GPCRからGタンパク質を介して細胞内標的へ情報が伝わる基本的な流れ。

05 / SIGNAL DIVERSITY

一つの構造から、多様な信号が生まれる

GPCRは共通する7回膜貫通構造をもつ一方、受け取る刺激と下流の応答は非常に多様である。 光、匂い、味、神経伝達物質、ホルモン、脂質性メディエーターなどがリガンドになりうる。

主要なGαサブユニット群

代表的な作用
Gs アデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMPを増加させる。
Gi/o アデニル酸シクラーゼを抑制し、cAMPを減少させることが多い。
Gq/11 ホスホリパーゼCβを活性化し、IP₃・DAG経路を作動させる。
G12/13 Rhoファミリーを介して細胞骨格や細胞形態を調節する。

また、活性化されたGPCRはリン酸化され、βアレスチンと結合することがある。 βアレスチンはGタンパク質を介する信号を弱めるだけでなく、 受容体の細胞内移行や別系統の情報伝達にも関与する。

06 / EXAMPLES

代表的なGPCR

GPCRはヒトゲノムにおける最大級の膜受容体群であり、感覚、生理調節、神経伝達に広く関与する。 多くの医薬品がGPCRまたはその情報伝達系を標的としている。

07 / REFERENCES

参考資料